イギリス積みとオランダ積みは、煉瓦の長い面(長手)と短い面(小口)を一段づつ並べていく方法だ。
イギリス積みとオランダ積みの違いは角の処理に違いが現れる。
次の写真は、イギリス積みである。
端の角付近に、長さを合わせるために『ようかん』と呼ばれる大きさの煉瓦を使っている。
『ようかん』は、上の写真の右端から二列目に一段おきに正方形状に見える煉瓦である。ようかんの寸法については、次項の煉瓦の大きさ別種類をご参考ください。イギリス積みに対してオランダ積みは、端の長さ合わせに『七五分』の煉瓦を使っている。
『七五分』は次の写真をご覧いただくと、一段おきに積まれている長手の右端に小口よりも長く、長手よりも短い煉瓦が使われているが、これが七五分だ。寸法は次項の煉瓦の大きさ別種類をご参考ください。
◆フランス積み
フランス積みは、長手と小口を一列で交互に並べていく方法である。
◆煉瓦の大きさ別の種類
名称 長さ(長手) X 幅(小口) Y 厚さ Z 1 おなま 210mm 100mm 60mm 2 はんぺん 210mm 100mm 30mm 3 二寸角 210mm 60mm 60mm 4 ようかん 210mm 45mm 60mm 5 せんべい 210mm 30mm 60mm 6 七五分(しちごぶ) 155mm 100mm 60mm 7 はんます 100mm 100mm 60mm 8 にごうぶ 45mm 100mm 60mm このほか、アメリカ積み、小口積み、長手積み・・・様々な積み方が用途に応じて使い分けられている。
「まんぽ」とは小規模な隧道のことを意味しますが、「ねじりまんぽ」とは、文字通りその隧道がねじれているように見えることから付いたネーミングです。
次のは写真は、南禅寺のインクラインの下を通る隧道です。現存するねじりまんぽ(斜拱渠)は、西日本に多く存在し、東日本には非常に少ない(碓氷峠に2か所ある他、分布の北限は新津に一か所あることが判っています。もしこれ以外に東日本でねじりまんぽの存在をご存じの方は、ぜひともご教授ください。)といわれています。
一般的に線路の下に隧道(トンネル)やカルバート(水路)を穿つときは、線路と直交させることが一番強度的に強いと誰もが思われることと思います。
ところが地形であるとか、周辺の開発の事情により、必ずしも線路と隧道やカルバートを直交させることが出来ない場合に、線路に対して斜めに穿つことになります。
穿った空間を補強するために煉瓦を積む際、強度を考えて線路に対して煉瓦が直角になるように積んでいくと、自然と渦巻が出来てきます。
斜めに穿った隧道やカルバートの強度を増すために、渦巻状に煉瓦が積まれたのではなく、斜めの隧道の中で線路に直交するようにアーチ部分の煉瓦を積んだ結果、渦巻が出来たと考えると判りやすいのではないでしょうか。
ここで二つの図を書いてみました。
まずは平面図・・・上方から見下ろした図をご覧ください。
線路に対して煉瓦が直交するように積まれている様子がお分かり頂けると思います。
次に側面図をご覧ください。
直行するように並べられた煉瓦がアーチ状に積まれて側面に降りてくると、このようになります。
ここまで来ると皆さんぴんと来ましたね。鉄道と隧道やカルバートが交差する角度によって、ねじれ方も変わってくるということです。
交差する角度(斜架角)をθ、隧道の中の渦巻の立ち上がりの角度(起拱角)をβとすると、次の公式が成り立ちます。
tanβ=2/(π tanθ)
さあ、ここまでくると、実物の角度を測ってみたくなるのは人間の性でしょうか?